主体性を育む – アロハの探求から始まるユニット学習とは
何をすべきかが決まっていない中で自ら選び行動する力
皆さんは、「自主性」と「主体性」のちがいについて、考えてみたことはありますか?
少し意味が似ているように思う方も多いかもしれません。
「自主性」は、既に決められたことに対して自主的に行動-実行されるものです。例えば、学校で先生に「〇〇やってくれる人いますか?」と聞かれたときに、「はい、やりまーす!」と答えて行動するときのように、既にある選択肢の中で、行動してくれることを指します。
これに対し「主体性」とは、何をすべきかが決まっていない課題に向けて、自らの判断と責任のもとで行動する性質を指します。まさに、アロハの3つの教育理念の1つ「Think creatively」を通じて、自ら考え行動できる力というわけです。
社会に出たら、決まった答えを待つのではなく、現状を理解し改善し、道を切り開く力が必要とされる時代です。常に現状に疑問を持ち、より良い方法を導き、行動に移すこと。
アロハの目指す主体性では、常に「Think globally. Act locally. (国際視野を持ち、そして身近なことから行動に移すこと)」の考え方が軸となります。
文部科学省では主体性を、「与えられたものであっても、自分なりの意味付けを行ったり、自分なりの工夫を加えたりすること。単なる客体として受動的に行動するのでなく、主体として能動的に行動すること。」と定義しています。
そして、学習指導要領の総則には、主体的で対話的で深い学びと定義されていることは周知のことかと思います。その中でも「主体的な学び」を、「学ぶことに興味や関心を持ち、自己のキャリア形成の方向性と関連付けながら、見通しを持って粘り強く取り組み、自己の学習活動を振り返って次につなげる」こととしています。
アロハの先生は答えを教える人ではなく、ファシリテーター
そのように定義がされているにも関わらず、なぜ日本の教育の中では主体性がなかなか伸びてこないのでしょうか。
1つの正しい答えを導くこと、答えを暗記することをたくさん経験して大人になった我々にとって、子どもたちに答えを言わずに、子どもたち自身が探求し深く向き合い、考えるように導いていくことは、とても難しいことなのかもしれません。
アロハでは、探求学習を通じて子どもたちの主体性を引き出していきます。
アロハの先生たちは、答えを教える人ではなく、子どもたちの学びや探求を導くファシリテーターです。
子どもたちが、たくさんの疑問を持つこと。そして、そこから探求する楽しさや答えを自分で見つけ出すワクワクした体験を通じて「もっと知りたい!自分の考えを伝えたい!」という思いを持つように導いていきます。
その先では、子どもたちは、自分たちが何のために行動するのか自ら考えて選択することを知り、自らの行動に責任を持つということの意味を自ら見つけていきます。
探求学習の過程における主体性を導くプロセス
実際の探求学習の様子を見ていきましょう。
11月12月のユニットは、「Environment (環境) 」でした。
最初に子どもたちに、「What is environment ?環境ってなんだろう?」と、子どもたちが探求を始める前に持っている知識を聞いてみました。
そこでは、今まで探求してきた別のユニットでの経験を通して考えを言ってくれました。river(川)、mountain(山)、sky(空)、town(街)、などいろいろな考えや意見が出る中で、正しい意見もそうでない意見もたくさん出ました。
先生たちは、子どもたちの考えを聞きながら、答えを言わずに書きとめてくれます。
なぜなら、そこから探求が始まるからです。
子どもたちに自ら課題を考えてもらう
今回の「環境」のユニットで最初に着目したのは「飲み水」です。
世界には、生きるために必要な飲み水にアクセスできない人たちがたくさんいるということ。
自分たちと同じくらい小さな子どもたちが、お水を求めて何時間も歩いて取りに行く国もあること。
汚れたお水を飲むと病気になってしまうこともあること。
世界の水に関わるさまざまな環境事情を探求しました。
日本では、蛇口をひねると水を飲むことができ、綺麗な水が出てきます。優れた浄水システムについても知りました。でも世界の多くの国はそうではありません。
世界の水事情を知り、自分たちがとても恵まれた環境にいること、水を大切にする必要性などを真剣な眼差しで考えてくれました。
次に探求をしたのは、子どもたちの身近にある「紙」です。
紙が何でできているのか?古紙を集めている会社さんへの社会科見学を行いながら、私たちの生活に欠かせない化石燃料が限られているものだということを知り、リサイクルやリユース、リデュースなど身近なことから自分ごととして考えていきました。
必要のない時は電気をこまめに消そう。
ハンカチやマイ箸を持ち、紙や割り箸を無駄遣いしないようにしよう。
ハンドソープは使いすぎないようにワンプッシュ!
リサイクルできるようにゴミをちゃんと分別しよう!
毎日、がんばれたことにチェックもしながら、生活を行ってくれました。
そして、今、自然エネルギーが見直されていることも学び、子どもたちからウィンドパワーを使ったアイディアやソーラーパワーを使ったアイディアも出し、地球の温暖化や人間以外の生き物たちのことも考えることができました。
これからもコミュニティの皆さまとともに
私たちは、行動を選択することができます。
自分がどう行動するか、選択をするのは自分自身であること。自分の選択と行動に責任を持つべきこと。
子どもたちは、アロハでの様々な探求を通して身の回りの出来事を自分事として感じ、自分自身で気づき、行動に移していきます。
主体性を持って探求を楽しみ行動に移すことができる子どもたちは、とても素晴らしいですね。
最後に、このユニットで子どもたちへプレゼンテーションをしてくださったお米農家さん、社会科見学にご協力下さったコミュニティの皆さんに感謝申し上げます。